東京高等裁判所 昭和34年(ラ)341号 決定
本件競売及び競落期日公告(記録五八丁)によれば、本件競落期日は昭和三十四年五月四日午前十時と指定公告されていて、その後右期日の変更された形跡がないにもかかわらず、記録中には右競落期日の調書がない。元来競落許否の決定は競落期日において言渡すことを要し、右期日については調書を作ることが必要であり、右期日における手続の方式に関する規定の遵守は調書のみによつてこれを証することができることは競売法第三十二条第二項、民事訴訟法第六百七十七条、第百四十二条、第百四十七条の規定により明らかであるにもかかわらず、右のように競落期日の調書が存在しない以上、原決定は競落期日において言渡されたことがなかつたものと認めるのほかはない。従つて原決定はその手続において違法たるを免れないのみならず、そもそも原決定が即時抗告の対象となすべき効力を生じているか否かすら問題となり得る。ただ本件では、本件競落許可決定の原本が昭和三十四年五月四日附で作成され、即日書記課に交付され、かつ、即日掲示板に掲示されたことは、右決定原本の記載及びこれに押してある裁判所書記官の掲示に関する押印により明らかであり、右決定が競落人等の関係人に即日普通郵便を以て発送されたことは、記録編綴の予納郵券受払表の記載によりこれを推認すべく、このような方法によつて抗告人に対し翌五日右決定の送達があつたことは、本件抗告状の記載によつてこれを認めることができる。すなわち原決定は、適法な言渡を欠くけれども、送達の方法によつて告知されたものであり、決して言渡前における単なる裁判所の内部的意思決定に止まるものではない。そうして、決定は、競落許否の決定のように言渡を要するものであつても、言渡だけが唯一の効力発生原因であると解すべき根拠はないから、誤つて言渡がなされず、送達によつて告知されたときは、その告知の時に効力を生ずるものというべきである。従つて、原決定は、即時抗告の対象としての存在を有するものではあるが、前記のように法律の定める言渡を欠く点においてその手続に違法があり、取消を免れないものといわなければならない。
(川喜多 小沢 位野木)